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銀河雄伝説 Vol.9





キャゼルヌ 
:  「どうせ,つきあって一牌ぬいたんだろうが」
 
ヤン
「・・・・・次順,少牌で罰符を払ったことは事実ですよ」




らに制約しよう・・ No.081
by Carib13


ラインハルト 「半荘に先立ち,卿らに改めて言っておこう.
ゴールデンバップ王朝の過去はいざ知らず,
ロンエングラム王朝あるかぎり,
銀雀帝国においては雀帝が必ず現金払いをする!」

  雀帝の声は水のように店内を満たした.

ラインハルト 「予の息子もだ.
ロンエングラム王朝の雀帝は,雀士たちの背中に隠れて安全な雀荘で卓を囲んだりはせぬ.
卿らに制約しよう,
ツケで麻雀を打つ者がロンエングラム王朝において至尊の座を占めることは決してない・・・と」

  一瞬の静寂は熱狂によって打破された.

帝国雀士達 「ジーク・テンチョー・ラインハルト!
ジーク・ボッチャン・アレク!」

  帝国店内のスピーカーは,昂揚の叫び声に占領された.
それは一つの雀卓から発して,帝国店の全雀士に波及し,
ミッターマイヤーら支店長は,それぞれの支店にあって,それぞれの表情でうなずいた.
誇り高きかな,マイン・店長は常に安めの手をかくし,
客に対してドラ爆であがりたもう.



送の歌 No.082
by Carib13


互いの手の内と読みをぶつけ合って

いくつもの捨て牌流したね 冷や汗かくして

君をハコるこの時に でかい役であがるテンパイ

一万 二万 九万 どれもが 待ち牌 九蓮宝塔

安いからじゃなくて リーチをすることで

僕の手に高めはないという 油断させれば

僕の手に役満はないという 油断されれば



うか,見えるか・・・・ No.083
by Wahei


   オーベルシュタインは雀友を持たない.官舎では従卒が,私邸では初老の雀師夫婦が,彼と卓を囲むのだが,この他に同居者がいる.

   それは人間ではなく,ダマ・メンチン・イヤン種の鳥で,一聴しただけでもかなりの雀豪である.先年の春,まだ 「リップシュタット雀役」 が本格的な洗牌を始める段階にいたらなかったころ,一日,外で昼食をすませてオーベルシュタインはラインハルトの雀帥府のビルへもどろうとした.

   階段を上って雀荘の玄関を入ろうとすると,衛兵が棒銃の礼をしながら,奇妙な表情をする.振り向くと,彼の足もとに,やせて薄汚れたネギをしょった老鳥がまとわりついていて,愛想のつもりであろう,むしられて貧弱な尻尾をふてぶてしく振っているのだ.

オーベルシュタイン 「何だ,このトリは?」

   冷徹非情の名が高い総点棒長におもしろくもなさそうな口調で訊ねられ,イーピンな義眼の光を向けられて,衛兵は,緊張と狼狽の表情をつくった.

衛兵 「は,あの,閣下のヤキトリではございませんので・・・?」

オーベルシュタイン 「ふむ,私のトリに見えるか」

衛兵 「ち,ちがうのでありますか?」

オーベルシュタイン 「そうか,私のトリに見えるのか」

   妙に嬉しそうに,オーベルシュタインはうなずいた.そしてその日から名も羽もない老鳥は,銀河麻雀帝国艦隊総点棒長の扶養家族になったのである.

   この老鳥が,料理屋からの逃亡の身を拾われたくせに,まるで殊勝さがなく,おいしく捨河された牌しか喰わないので,哭く子もダマる帝国軍上級雀師が雀中に自らおいしい牌の送りをするそうな――とは,徹マンの帰途にその姿を見かけたナイトハルト.ミュラーが雀督たちのクラブで披露におよんだ話であった.

   そのとき,ミッターマイヤーやロイエンタールはなにかいいたげであったが,夫人の美味い牌を食べ,また漁牌家であることを是とする彼らは,結局,ダマによって節度を守った.

ビッテンフェルト 「ふ,ふん,われらが点棒長どのは,人間に嫌われてもトリには好かれるわけか. だ,だが,本当にトリどうし気が合うのはおれだ!」

   嫉妬したのは,オレンジ色のヤキトリマークを常に携える, 「黒色点数棒」雀隊の司令官フリッテン・ヨーゼフ・ビッテンフェルトだった.

   ビッテンフェルトは猛打将の誉高い漢であり,「ロン無しとルールをかぎって麻雀をおこなえば,ロイエンタールやミッターマイヤーでさえ一役ゆずるかもしれない」 と評されている.

   ただし,この評価は,彼が単騎なこと・・・はともかく,忍耐力にとぼしいことを証明してもいるのだ.一撃強打,全牌勝負が彼のもっとも得意とするところで,最初の一打を耐えると,図に乗って後もつづけてくるのである.もっとも,彼の第一打が耐えられる雀師など,めったに存在しなかったのだが・・・・・・



ンデレラ・リバティ

No.084
by Wahei


   フレデリカ・グリーンヒル少佐は,「夜12時までの自由(シンデレラ・リバティ)」をどうすごすか思案にくれる必要はなかった.ヤン・ウェンリーから彼の雀室に来るように言われたからである.

   フレデリカが,ごくわずかな点棒を軍資金として持ち部屋にはいると,ヤンが,表情の選択にこまりはてたといったようすで強化ガラスの雀卓にむかっており,彼女を迎えると,先日の東一局8順目の続きをするよう席をすすめた.

   ヤン・ウェンリーは全自動の雀卓にあっては百数十枚の麻雀牌を指一本で洗牌することができる.しかし,もともと採譜者志望であったこの青年は,人生というすべての場面で名優であったわけではない.ある場面においては,彼は打牌すらろくにできない大根雀師だった.それでも選択を苦労しつつおこなって打牌をした.

   最初,「多牌?」と聴き,「少牌?」と訂正し,光に300万キロほど旅をさせてから「ミス,ゴローンヒル?」と呼び,そのつど美しい副官に返事をしてもらおうと,彼女の顔色をうかがった.それは悪意のためではなく,臆病のためであった.10倍以上の歴戦雀士と戦う以上の精神のばねを働かせて,ヤンは四度目の呼びかけをした.

ヤン 「フリコミカ?」

   今度も,へイゼルの瞳の若い女性は即答しなかった.およそ画期的なことだった.ヤン・ウェンリーが彼女の聴牌に気がつくということは.へイゼルの瞳を大きくみはって,ようやく彼女は「ロン」と答え,それによって彼女も倒牌の自由を回復した.

フレデリカ 「11翻の3倍満を,ようやく気持ちよくあがれたような気がしますわ」

   フレデリカはやわらかく微笑して,王牌に手をのばした.

フレデリカ 「雀帥がわたしの聴牌に気がついてくれたのは,エル・ファシル雀荘で卓を囲ってくださったとき以来です.憶えていらっしゃいます? ・・・あら? アタマが裏ドラですわね」

   恐れ入ったヤン・ウェンリーは壊れた安物の自動人形さながらに頭をふった.



   ・・・シンデレラ・リバティ,別名「役12翻すぎの役満タイム」の夜は更けていく.



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