スクールカラー(1) 初代教頭 鳥垣吉成 |
昨年十月に札幌北高校内に開校準備室を開設して半年間、曽我校長他三名が仕事を進める中には、実に様々なことがあった。諸々の裏話は、もっと年月を経て明らかにすべきものとも思うが、記憶が鮮明なうちに、また、このような事柄に関心が一番深いのは、第一期生諸君とその父母の方々であると思い、ペンを執ることにした。 開校式の数日後、私は開校のしおりを関係筋の数名の方に届けた。その中に、かつて何校かの校章のデザインを手がけた方がいた。私が差し出した開校のしおりの表紙を見て、「スクールカラーは?」と問われた。「深緑です」と答えると、「この色は深緑ではないね」といわれた。正しくいえば、まさにそのとおりである。「藍の葉の色です」と返すと「そうか、出藍の誉れか」と私達の意図を察してくれた。 そこで、この裏話の紹介は、スクールカラーから始めたいと思う。本校は、「あいの里」に建つわけだが、「あい」は開拓の当初、この地で染料用の藍が栽培されていたことによるという。それなら、スクールカラーは藍色にしたいところだが、先輩の篠路高校が、使っている。しからば、藍の葉の色はどうだ、緑の葉から藍色が生まれる、「出藍の誉」にぴったりではないかということになり、藍の葉をさがしてみることにした。 しかし、季節は秋、篠路地区にわずかに栽培されている藍も時期を終わっている。制服業者のつてで、藍の栽培が盛んな四国から色見本を取り寄せたところ、二色の見本が届いた。見本にはインキメーカーの色番号がついていた。このメーカーに色の名称を問い合わせたが、名称がつけられないから番号で呼んでいるという答であった。一方、制服は紺のブレザーコートとし、ネクタイはスクールカラーに近い色をときめ、四国から届いた色見本を参考に、紺色ともよくマッチする色として、現に着用しているネクタイの色を制服業者がさがしてくれた。丁度この頃、篠路農協の組合長さんをはじめとする地元の方々と会合する機会があり、色見本を見ていただいた。二色とも藍の葉の色によく似ているが、第一の色は「藍の若いときの葉の色、肥料があまり効いていないときの色」ということであり、第二の色は「藍の一番盛んなときで、肥料がよく効いたときの色」ということであった。この第一の色を開校のしおりの表紙に用いたのである。第二の色は、第一の色より緑色が濃く、若干黒味がかかってみえる。 当時、開校準備室では、若い藍の葉の色ということからも、色の感じからいっても、スクールカラーには第一の色がふさわしいと考えて、次の作業にとりかっていった。(以下次号) |
(昭和63年5月20日発行「拓高PTA会報」第1号から) |
スクールカラー(2) 初代教頭 鳥垣吉成 |
前号で、スクールカラーを藍の葉の色として作業をすすめることにしたところまで述べた。
次の問題は、この色の名称をどうするかであった。メーカーの色番号ではどうしようもない。札幌北高校の美術の先生と工芸の先生に相談してみた。両先生から色彩に関する本を数冊借りて、色見本と何回も比較してみたが、ピッタリ合う色がなかった。やはり、メーカーの答のとおりで、色の名称はないようだ。一番近いと思った色は、ある種の鴨の首にある羽毛の色で、正式な名称は忘れたが「…グリーン」というものであった。しかし、この名称は馴染もないし、少々長過ぎる感があった。やはり、言い易い名称で、名称から色がすぐわかる方がよいということになり「深緑」としてはどうかという方向に固まっていった。 開校式の数日後、書店で色彩に関する本を目にして立ち読みしたところ、色は出てなかったが、「子鴨色」として、緑の一種で子鴨の首のところの色というのがあった。しかし、鳥類図鑑などで見る鴨の首の緑色は、藍の葉の色より緑があざやかで光沢があるように見える。 スクールカラーの名称の検討と平行して、校章が決定し、校旗を制作する段階になった。校旗の地の色をどうするか、これが正真正銘のスクールカラーであろう。旗屋の話では、布地を染色する染料に基本的な色があり、その色ならば、いつ、どのような布地にも同じ色調で染めあげることができるが、それ以外の色では、色調を統一することが困難であるし、最初に制作する校旗の色も、藍の葉の色では、色見本と同一の色に染めあげることができるかどうかわからないということであった。旗屋のいう基本的な色で藍の葉の色に一番近い色はというと、やはり、深緑であった。そこで、校旗は、地の色を深緑として制作することになった。合わせて、校章を白抜きにした深緑色の旗も染めてもらった。この旗は、開校式に国旗、道旗とともに、演壇の上方に並べて掲げ、現在は、校舎の玄関に掲げてある。 本校のスクールカラーは、これから一般に校旗の色として認識されていくであろう。開校のしおりの表紙の色も校旗の色と同一の深緑にすべきであったかとも思う。それにあえて四国から送られてきた藍の葉の色の見本どおりにしたのは、私達が、当初意図した色を皆さんに見ていただきたかったことと、表紙の色としては、この色の方が落ちついた感じで見やすいと思ったからである。 本校のスクールカラーは深緑、これは、本校の建つ「あいの里」にちなみ、また、生徒諸君に「出藍の誉」の期待を込めた、藍の葉の色が端緒である。 |
(昭和63年7月23日発行「拓高PTA会報」第2号から) |