[ HOME | 雀英伝トップ | 銀河雀雄伝説 前ページ 次ページ ]


銀河雄伝説 Vol.3



ヤン: 「このさき,何千荘もそうなんだろうか・・・・」



問会 @ No.021
Vol.03-p.132 by Torünicht


ヤン 「雀牌が細胞分裂して麻雀になるのではなく,主体的な意志を持った雀士が集まって雀卓を囲むのである以上,どちらが主でどちらが従であるか,麻雀社会にとっては自明の理でしょう」

ネグロポンチ君 「自明の理かね。私の見解はいささか異なるがね.雀牌にとって雀士は不可欠の価値をもつ」

ヤン 「そうでしょうか? 雀牌は雀士がなくてもそこにありますが,雀牌なくして雀士は存在しえません」

ネグロポンチ君 「こいつは驚いた! 君はかなり過激な雀牌主義者らしいな.ちがうか?」

ヤン 「ちがいます.私は盲牌主義者です.もっとも,おいしそうな雀牌を盲牌すると,すぐ先ヅモしてしまいますが−−」



ゼルローン雀荘へようこそ! No.022
Vol.02#-p.009 by Torünicht


"麻雀暦796年12月1日"

 今度イゼルロン雀荘でバイトをすることに決まったとき,それを機会にヤミテンをやめることにした.いつまでつづくかわからないが,ぼくがそう告げると,ヤン店長はもっともらしくうなづいたものだ.

「ヤミテンをやめるのはいいことだ,私はやめる気はないけどね」

「どうしてですか? いいことだっておっしゃるなら,ご自分でなさればいいのに・・・」

「だって,お前,私がテンパイ即リーチしても,お前は振り込んでくれないじゃないか,昔からいうだろう,ヤクがついた時のために.リーチを残しておけって」

 ヤン店長が「昔から」ということばを使ったら,ぼくに反論できるはずはない.

 それにしても,ヤン店長はイゼルロン雀荘にキャゼルヌ名人を招いて麻雀を指導してもらいたいと麻雀協会に願いでているが,なかなか許可がもらえないそうだ.

 それはそれとして,ヤン店長はぼくにキャゼルヌ名人の裏スジ家族という麻雀ゲームをくれた.スジというのは裏をかくものだとヤン店長は信じている.音声入力式の麻雀ゲームを,ヤン店長は心の底から軽蔑して,「猫の鳴き声でチーする馬鹿なゲームだ」と言っている.

 前のバイト先の雀荘ハイネセンを辞めるとき,ブッシュ店長に引き止められた.

「君のために言っているのだよ.ユリアン.田舎の雀荘なんかで打ったら,待ちが狭くなる.君は都会の雀荘で多くの人々と打って,よりよく成長すべきだと私は思うね!」

 ブッシュ店長はそう言うけど,口には出さない理由があることを,ぼくは知っている.ひとつは,ぼくがこの雀荘での年間トップ獲得王だからだ.ぼくがバイトで稼ぎを上げないと,この店の売上げが半減するので,ぼくの存在はブッシュ店長にとって重要な意味があるわけなのだ.もうひとつの理由はブッシュ店長が,ヤン店長の打ちスジをまったく理解していないからだ.「ヤミテンをさせたら強い人だ」と何度もぼくに言った.つまり,リーチしたら,からきしダメというわけだ.べつに否定する気はないけど,もっと陰険な打ち方だってあるだろう.ヤン店長は,自分の欠点を知っているけど,打ちスジを変える気はないようだ.ぼくも変えて欲しくなどない.

 今日はこれぐらいでペンを置くことにしよう.今夜も徹マンだろうし・・・


ョンボのカタチ,アガリのカタチ No.023
Vol.02#-p.011 by Torünicht


"麻雀暦796年12月2日"

 麻雀船での徹マンも,今日で終わりだ.明日はイゼルロン雀荘に到着して,あたらしい半荘がはじまる.ハコれるかな? そう思いたい.一昨年の春,ヤン店長の店の前ではじめて立直したときも,そう思ったし,それはカラテンではなかった.

 それ以前の,二年間にわたる福祉施設での麻雀.その前は,さらに二年間にわたる祖母との二人打ち麻雀.そしてそのスタートは,小学校の校長室に呼ばれて父のハコテンを知らされたときだった.

「クイタンロンという奴は,じつに悪どい,けしからん早アガリだ.ピンフとリーチと門前主義の敵であり,高め狙いの敵,場の流れの敵だ.どんなに多くのツモが,高めのアガリを殺されたか.どんなに多くの子が,自分のツモ巡を殺されたことか・・・」

 そんなふうに延々と無意味な愚痴がつづくと,ぼくはさとるしかなかった・・・父がハコッたのだ,クイタンに喰い殺されたのだ,と.

「・・・だから君も,お父上がそのような邪悪なアガリに親を流され,ハコッたことを,誇りに思わなければならない」

 と話を結んだとき,あることに気付いた・・・校長先生がもっとも重要な場でチョンボしていることを.たかが麻雀暦八半荘の子供に見ぬかれるていどの,あからさまなチョンボだった. だけど,とにかくそれはぼくが初めてチョンボを通告するチャンスには違いなかった.  自分のチョンボも他家から通告されることが多かった.とヤン店長は言う.

「親でチョンボしたときも,麻雀学園でチョンボしたときも,エル・ファシル雀荘でチョンボしたときも,他家からそれを告げられたからね.逆に言うと,私自身,他家にチョンボを告げたことが何度もあるし,チョンボはたがいに宣告しあうことで成立しているんだな」

 どう言ったらいいのだろう.ヤンは,チョンボに普遍的な麻雀法則をあてはめたがる・・・これは,アレックス・キャゼルヌ名人が言ったことで,残念ながらぼくが考えだした言いかたではない. ぼくに紹介状を手わたすとき,キャゼルヌ名人は・・・当時は八段だったが・・・にやりと笑って片目を閉じて見せた.

「まあ気長にゆっくりカモにしてやってくれ.いろいろ常識はずれのアガリをするやつだが,勝てる見込みがないわけじゃない」

 さて,カモにされたのはいったい誰だろう?


の局を放棄する No.024
Vol.05-p.041 by Wahei


ムライ 「ヤン提督が帝国軍への放銃をおそれてベタオリしたとなっては,同盟雀師の受ける衝撃は大きいですぞ.1順目にしてノーテン罰符を恐れ,形式テンパイをねらうかもしれません.そのあたりを,ご一考ください」

シェーンコップ 「私も参謀長のご意見に賛同しますね.どうせなら役牌のみででもあがって,少しでも点差をつめておくべきだと思いますがね」

ヤン 「それでは安い! ローエングラム公に対する勝機を失ってしまう」

シェーンコップ 「ほう,勝機!? すると,マクれると思ってはいらっしゃるのですか?」

ヤン 「シェーンコップ少将の言いたいことはわかる.吾々はトップをとるにはきわめて不利な立場にあるし,子満貫レベルでの勝利が親満レベルの敗北をつぐなえないというのは麻雀上の常識だ.だが,今回たったひとつ,逆転トップを決める機会がある」

シェーンコップ 「それは・・・・・・?」

ヤン 「ローエングラム公は親でノーテンリーチだ.流局時の罰符がこの際はねらいさ」



ロージット(同盟軍版) No.025
Vol.05-p.013 by Wahei


同盟軍将帥 「リーチっと!」

同盟軍将帥 「一発! あらたなる役に!」

同盟軍将帥 「倍満! もたらされるべき点棒に!」

トゥルナイゼン 「ハコテン! 自由雀師同盟,最後の百点棒だ!」

ミッターマイヤー 「若い連中は現金ばらいがいい・・・」



ン提督のハコテン隊 No.026
Vol.05-p.043 by Wahei


シェーンコップ 「メンゼンを支持するのも雀師なら,鳴いて自由に打つのも雀師です.私はこの国で打ち始めてそろそろ30局になろうというのに,いまだに解決できない問題があるのです.つまり,雀師の多数がメンゼンではなく『竜』のように哭きを望んだら,というやつですがね・・・・・・」

ヤン 「その疑問には,誰にも解答できないだろうね.だけど・・・・・・」

「人類が賭け事を発見してから100万年,近代麻雀が創刊されてから2000年たらずだ.結論を出すには早すぎると思う」

「そんなことより・・・・・・」

「目の前に危険牌があるわけだから,まずそれをかたずけよう.テンパイもできていないのに,リーチ棒の準備をしてもはじまらない」

シェーンコップ 「それにしても,ドラが手役の負担だからといって,鳴かせてやるのは気前がよすぎますな」

ヤン 「必要なときには使う.必要が無くなったから捨てただけのことさ」

シェーンコップ 「また必要になったら?」

ヤン 「鳴くさ,その間,帝国にあずかってもらう.メンゼンがつかなくなるのは残念だが」

シェーンコップ 「ドラとか,大三元の確定牌とかいうものは,そう簡単に鳴けれないものですがね」

ヤン 「放銃してくださいと頼んでも,当然,拒絶されるだろうな」

シェーンコップ 「スジひっかしかないでしょう」

ヤン 「相手はロイエンタールだ.帝国軍のカベ打ちのひとりだ.ひっかけがいがあるというものさ」



自動雀卓・・・まさに科学の勝利!? No.027
Vol.02#-p.012 by Torünicht


"麻雀暦796年12月3日" Aパート

 初対戦,初対戦,初対戦の日だった.何回,リーチです,と口にしたかったことだろう.うまくテンパイにだけはしようと心がけたつもりだ.ぼくはヤン店長お抱えのバイトではあるけど,現状は雀士見習いのヒヨッコにすぎない・・・どちらにしても,メンゼンでもアガリたかったが,ぼくが思いきり浮いたり,生意気にトップを獲ったりしたら,ヤン店長が悪く言われるのだから,気をつけるべきなのだ.  印象に残る対戦からあげていこう.まず,何といってもイゼルロン雀牌! 重さ6キロの銀色の雀牌をツモッたときは,思わず声をあげてしまった.いままで何度も立体テレビやホログラムや写真で見ていたけど,やはり実物は印象がちがう.何というか,そう,なんという重厚感とでもいうのだろうか.洗牌から場所決め,さらに牌をこの手で並び終えるまでの40分間,ぼくの呼吸器と循環器はフル回転していた.こんなに体力を消耗したのは,「ヤン店長の雀荘に行くように.彼がこれから君の雇い主になるのだ」と麻雀養成所の所長に言われ,体より大きな自前の雀卓を背負って,ヤン店長の雀荘を訪れたとき以来だ・・・^^;

 そして,今日はヤン店長とのコンビ打ちもした.「ほら,ハコられるんじゃないぞ」と振りかえる店長の背中にはりついて雀荘にはいった・・・数百の手が,いっせいにイゼルロン雀荘で雀牌をかきまぜている.午後11時40分だった.

 ヤン店長が・・・そしてぼくも・・・イゼルロン雀荘に不満があるとすれば,美しいイゼルロン雀牌もふくめて,すべての雀卓が手積み式だということだろう.むろん,こんな不満は,ばかげている.雀卓も雀牌も全自動ではないけど,でも本物だ.雀荘ハイネセンでは半荘がおわる度に雀牌の色が変化する全自動雀卓を導入していたが,ここでも麻雀は楽しめる.

 全自動雀卓といえば,いつだったか,寒い晩に銀橋雀荘でエネルギー供給システムが故障して,ひと晩,ヤン店長とぼくは,全自動雀卓での手積み麻雀を味わったことがある.ぼくはすぐドラを切り,テンパイ即リー,非常用の裏ドラでアガリとおして,翻増殖用の字牌カンやチートイツドラ2でもアガッた.口三味線をひいたり,カンドラ話をしたりして,ささやかな楽しい徹マンだった.翌朝,もうふらふらで狂っているところを,店の南4局雀卓課の係員たちがやってきて,あきれて雀卓を見わたしていた・・・^^; ヤン店長が,雀卓の上で寝ていた.その後,その雀荘の利用要項に「雀卓上での睡眠およびそれに類する行為を禁ずる」というとんでもない条項が加えられた理由を,ヤン店長とぼくだけが知っている.



たしはワルター・フォン・シェーンコップ No.028
Vol.0?-p.??? by Torünicht


シェーンコップ 「麻雀評議会議長,ジョアン・レベロ閣下ですな?」

ジョアン・レベロ 「君は誰だ? こんなところでなぜアガル?」

シェーンコップ 「わたしはワルター・フォン・シェーンコップ.たった今,あなたをハコテンにしたところです」

ジョアン・レベロ 「君の勇名は,常々耳に親しんでいる」

シェーンコップ 「それは,それは恐縮の極みですな・・・」

ジョアン・レベロ 「なぜ,このような暴挙にでたのだ?」

シェーンコップ 「お言葉ですが,暴挙とはあなたの振り込みようでしょう.わたしたちのことはおいてもヤン・ウェンリーへの振り込み方が公明正大であったと,ヤミでハッてアガルことができますかな?」

ジョアン・レベロ 「言いづらいことだが,麻雀の勝敗とは一回のアガリというレベルで語りうるものではない」

シェーンコップ 「一回のアガリを手にするために,半荘に総力をあげるのが雀士というものでしょう.ましてや,ヤン・ウェンリーが,あなたのために貢献してきた過去を思ってもごらんなさい」

ジョアン・レベロ 「わたしの心が痛みを覚えないとでも思っているのか! 非道は承知している! 承知の上でわたしは他家の点棒を取らざるをえんのだ!」

シェーンコップ 「なぁるほど・・・あなたは良心的でいられる範囲では良心的な麻雀屋らしい・・・だが,結局のところあなた方,麻雀屋はいつでも切り捨てる側にたつ! 危険牌を切るのは確かに痛いでしょう.ですが,切り捨てられた危険牌からみれば,結局のところどんなテンパイも自己陶酔に過ぎませんよ.自分がアガルために危険牌を切って裏スジを通した.自分はなんと大胆で,しかも危険な雀士なんだ・・・というわけですか? "哭いて場風を切る"か, ふん! 自分が犠牲にならずに済むなら,いくらでも老頭牌が出ようってものでしょうなぁ!」

ジョアン・レベロ 「もはやなにを言っても自己弁護にしかならんな・・・ひとつだけ教えてくれシェーンコップ中将,君はこれから何をアガルつもりだ?」

シェーンコップ 「なぁに,ごく常識的なことですよ.ヤン・ウェンリーには悲劇の雀雄という役柄は似合わない.観客としては,点棒の清算を要求したいわけですよ.場風によっては力づくでねぇ・・・もっとも,すでに場風がのっていますがなぁ」



ラはいい・・・ No.029
OVA-001 by Torünicht


キルヒアイス 「ドラを見ておいでですか?」

ラインハルト 「ドラはいい,なにごとにも動じず,いつもじっと同じ場所で瞬きつづけ,わたしたちを見守ってくれる」

キルヒアイス 「はい,あのドラのウラがのらなければ,我々のアガリは小さなものなのかもしれません」

ラインハルト 「確かに我々がアガろうしているものにくらべれば,はるかに小さいヤクだ・・・で?」

キルヒアイス 「我々の対面は2倍のほぼ4万点,3方向からハコテンにしようとしています」


次回予告 ”形勢は逆転した,優位に立つラインハルトの連荘にさらされ絶体絶命の同盟軍第2半荘,だがヤンには起死回生のヤクがあった.

次回,銀河雀雄伝説,第2局『ラスだって海底(ハイテイ)』”



名誉な二者択一 No.030
Vol.01-p.210 by Wahei


 第10雀隊の戦力はつきかけていた.点棒の4割を失い,残った点棒も100点棒,1000点棒数本という惨状である.
 雀隊参謀長のチェン少将が發白の牌を敵に鳴かれてしまい,司令官を見やった.

チェン 「閣下,もはやテンパイを続行するのは不可能です,放銃かベタオリを選ぶしかありません」

ウランフ 「不名誉な二者択一だな,ええ?」

ウランフ中将は自模りながら返答した

ウランフ 「放銃は性に合わん.ベタオリするとしよう.全雀隊に命令を伝えろ」

 ベタオリするにしても,血路を開きたくなかった.残存の安パイを紡錘陣形に再理牌すると,河牌の一角にそれを一挙に叩きつけた.安パイを集中して使用する逃げをウランフは知っていた.
 彼はこの巧妙果敢なベタオリで,他家の部下の危険牌打ちを自制させることになり放銃させない事に成功した.しかし彼自身は放銃した.
 彼の安パイは最後まで手の内に余っていたが,ノーテン罰符を回避しようと欲を出した瞬間,ハイテイに敵ヤクマンの直撃を受け,ハコッたのである.




[ HOME | 雀英伝トップ | 銀河雀雄伝説 前ページ 次ページ ]



作品への 叱咤激励・美辞麗句 をお待ちしています♪

[ お客様の掲示板へ ]