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銀河雄伝説 Vol.7



ユリアン:「提督はなぜ,リーチをなさったのですか?」

ヤン:「決まってる.他に役がなかったからだ」



ルヴァシー事件 No.061
Vol.09-p.122 by wahei


ラインハルト 「ルッツ」

ルッツ 「はい,陛下」

ラインハルト 「余は,卿を,ハコテンにしてまでヤキトリを解消したいとは望まぬ.いくら遅れてもかまわぬ,あとから必ずアガれよ」

ルッツ 「もとより,小官はハコらずにこの半荘を終えるつもりでございます.おそれながら,陛下とは先局に9・6をともにオナテンさせていただきました.ぜひ今後の安牌と槓ドラも,わかちあえていただきたいと存じますので」

 ルッツは気負うでもなく,微笑をたたえて皇帝に答え,ミュラーに視線を送った.「鉄壁ミュラー」はうなずき,見当違いな山から牌をツモろうとしたラインハルトの腕を,うやうやしくとった.

ミュラー 「あさってヅモです,陛下」

 ラインハルトの頬が,羞恥と炎で紅く染まった.

ラインハルト 「ルッツ,余以外に銃を放ちそうになったら降りよ.ロイエンタールは雀師を遇する道を知っているはずだ」

 ルッツは一鳴きしたかったが「チー」とも「ポン」とも口には出さなかった.皇帝たちの捨牌を見送り,こちらを振り向いたラインハルトの顔に白い牌を欲しているのを見出した.ルッツは無言で理解し,ツモ速度を速めるでもなく黙々と打ち続けた.

 迫りくる他家への危険牌を前にして,ルッツの沈着さには刃こぼれひとつ生じなかった.オリを呼びかける声を聞いたとき,彼の返答はこうであった.

ルッツ 「せっかくの機会だぞ.ロンエングラム王朝の上級雀師が,どのようなトビかたをするか,見とどけていったらどうだ?」

 どこまでも平静な声でルッツは言い放つと,彼自身の精神がそうであるように,まっすぐ腕をのばし,牌を自模る.

ルッツ 「まだか・・・まだ,陛下はテンパられないのか」

 ルッツは彼以外の人のためにいらだった.

 卓が大きく動いた.赤と緑,ラインハルトが二つの牌を鳴いたときルッツは,あるいは今こそがその好機かと決し,手牌から静かに白の牌を河に打ち込んだ.ルッツは顔をあげた.彼が放った白牌の先に,銀河雀国の雀師なら身誤りようのない皇帝専用のそれが映った.誇り高く空にはばたく純白のヤキトリマーク.讃歓の思いを込めてトイメンからその姿をひとりの男が仰いでいる.

 忘我の一瞬がすぎ,自分の点棒がまだ残っていることを確認したとき,コルネリアス・ルッツは自分の左鎖骨方向,上家の手牌が倒れるのを見,それがダブロンであるのを実感した.ルッツはわずかに眉をひそめただけで,点棒に余裕があったことに感謝し,さらに二翻,その分の点棒を支払った.自らのハコに左手を当てたとき,不快な感触をおぼえた.指の間から,黒い点しか持ち得ない点棒が,数本這い出している.

 そのままの姿勢で,急速にへこんだ点棒をもう一度次局に回復するために洗牌しようとしたが,右斜め前から放たれた一声が,ルッツのハコに残る点棒を奪い取った.皇帝の忠臣のハコから点棒が消え,赤い箱だけが残った.

ルッツ 「マイン・カイザー,あなたの御手のみに放銃牌をお渡しするお約束でしたが,かなわぬことのようです.清算はヴァルハラでいたしますが,どうかそれが遠い未来のことでありますように・・・・・・」



ルヴァシー事件後 @ No.062
Vol.09-p.124 by wahei


ロイエンタール 「ルッツが飛んだ?」

 それは,ロイエンタールにとっての外馬がハズレたことを意味していた.少なくとも全財産のほとんどを賭けていたロイエンタールには瀕死の出来事だった.

ベルゲングリュ−ン 「総督閣下,いかがなさいますか」

 麻雀査閲監ベルゲングリューン大将が,形テンにもほど遠く,チーの気も失せたような顔を上官に向けている.いますぐこの場でオープンリーチへの放銃を命じられても動じないであろう雀師が,かろうじて恐慌を自制しているのであった.

ロイエンタール 「聞いてのとおりだ,ベルゲングリュ−ン,おれはロンエングラム王朝における最低の貧乏元帥ということになったらしい」

ベルゲングリュ−ン 「ですが,総督閣下,たしかに前例なき負債であっても,閣下の直接打たれたことではありますまい.皇帝陛下に事情をご説明になれば借金も・・・・・・」

ロイエンタール 「どうにもならんよ!」

 ロイエンタールは吐きすてた.自分自身の雀運さえ突きはなす態度が,その声にはある.彼は無一文である.

ロイエンタール 「だいいち無一文であるおれが,なぜ,必死に,かつ卑屈に,金を借りねばならないのか」

ベルゲングリュ−ン (閣下・・・・・・それは当然かと思いますが・・・)

ロイエンタール 「ばかばかしい.今日まで,そのような借金ができるようなカイザーにつかえてきたのではない!」

ベルゲングリュ−ン 「たしかに皇帝陛下は貧乏雀師のもとにお生まれになられたとか・・・・・・」

ロイエンタール 「そうだ,おそらく卿の言うとおりであろう,陛下は倹約家(貧乏性)であらせられれば・・・・・・」



ルヴァシー事件後 A No.063
Vol.09-p.125 by wahei


ロイエンタール 「皇帝に頭を下げるのはかまわぬ.いや帝国雀師としてはそれが当然のことだ.だが・・・・・・」

 ロイエンタールは口を緘したが,ベルゲングリューンには未発の主張を想像することができる.

ベルゲングリューン (金融審査窓口にいるオーベルシュタインやラングに頭を下げることができるか)

と金銀妖瞳の提督は言いたいのである.

ベルゲングリューン (そうだ,瞳の金銀を売れば生活費の足しになるのでは)

と,ベルゲングリューンが不謹慎な考えを頭に描いていた後,ロイエンタールはつぶやいた.

ロイエンタール 「無一文になるのは,いっこうにかまわん.だが,無一文にしたてあげられるのは,ごめんこうむりたいものだな」

ベルゲングリューン 「・・・・・・」

 金欠の深刻さに狼狽するといった凡人としての可愛気がないため,この男は,しばしば誤解されるのだ.その点,彼が反発するオーベルシュタインも普段から顔面が色白なため,金欠時における栄養失調が原因の,顔面蒼白さが目立たないという,類似したところがある.しかし,それを指摘されるのは,彼には不本意であろう.

ロイエンタール 「ところで,ベルゲングリューン,卿はどうする」

ベルゲングリューン 「どうする,と申されますと?」

ロイエンタール 「卿がカイザーに借金してくれるというのなら,いまここでおれを脱がせ.この元帥服を抵当に入れればいくらか高く借りられるだろう」

ベルゲングリューン 「小官の採るべき道はただひとつ,閣下とともに服を携えることなく,皇帝のもとへ参上し,閣下が無一文であると申しあげるだけです」

ロイエンタール 「・・・・・・ベルゲングリューン,カイザーのもとへ下着ひとつで参上するのはよい.だが,その途上,あるいはその直前に,軍務尚書なり宇宙艦隊司令長官なりに襲われないと言いきれるか」

ベルゲングリューン 「!?」

ロイエンタール 「おれは軍務尚書の撃墜リストに名を記して,後世,嬌笑(きょうしょう)されるような事をされるなど,絶対に耐えられぬ.それくらいならいっそ宇宙艦隊司令長官に・・・・・・」

 と言いかけて,さすがにロイエンタールは羞恥で唇をかみ,放出される寸前の激情を塞ぎとめた・・・・・・



寥の思い No.064
Vol.07-p.039 by wahei


 みかげ石調のハコにあるラインハルトの点棒は,1000点棒3本,100点棒4本だけであった.リップシュタット雀荘でリーチ,タンヤオ,ドラ1の3翻50符,親の9600点が他家へ去り,さらにハイテイ,イーペー,タンヤオ,裏ドラ1の4翻,親に12000点を放出していたのである.

 とばないかぎりはいずれ巻き返しえるとしても,ラインハルトの点棒が半減していることに気づくと,ともに卓を囲んでいる歴戦の雀師たちも,一瞬あがるのをためらってしまうのであった.

ビッテンフェルト 「さびしくなったものだ」

 ビッテンフェルトがカイザーの点棒を見て,ため息まじりに軽く打牌した.

 そのとき,上家の雀師が無言で牌を倒した.

 ビッテンフェルトの上家に座っているエルンスト・フォン・アイゼナッハ上級雀師だった.現在の持ち点は33000点,やや浮きぎみで,河に牌を捨てるときは,なでつけるようにきれいに並べていたが,最端部の牌だけは横を向いており,ひっそり立直されていたことにビッテンフェルトは気がついていなかった.

 アイゼナッハは極端なほど無口な男で,「カイザー・ラインハルトと卓を囲むときでさえ『チー』と『ポン』以外の台詞を口にしない」という評判であったが,

ビッテンフェルト (せめて『リーチ』という台詞だけでも,その少ない語録に加えるべきだ!)

と,ビッテンフェルトは心の中で叫ばずにはいられなかった.いまさら強要することもできないビッテンフェルトであったが,その日を境にビッテンフェルト家の家訓に以下の項目がひとつ付け加えられた.

『哭くときは大きな声で!
リーチをするときはより大きな声で!!』



代の振込人 No.065
Vol.0?-p.??? by Torünicht


ロイエンタール 「ヨブ・トリューニヒトという男は稀代の振込人として名を残すだろうよ」

ミッターマイヤー 「振込人?」

ロイエンタール 「ああ,奴は先だってリーチ一発ドラドラとメンタンピン三色をたてつづけに振込んだ.そして,今度は七対一ドラドラだ.奴が卓上に牌を捨てる都度,場が流れる.なかなかどうして,フェザーン人と張り合えるほどの振込み人だと思わざるをえん」

ミッターマイヤー 「そうだな,振込み人として奴は一流だ.だが,アガル方は駄目だな.奴が狙うのはチンイツとホンイツだ.誰が奴に振込む? 結局,奴は自分自身のアガリの形に固執しているに過ぎないのさ」

ロイエンタール 「卿の言うことは正論だがなミッターマイヤー・・・奴はアガルに際して,他家の安全牌や危険牌など気にしたりせぬよ.そして,そういう輩ほど,テンパイの張りようは遅く,待ちは狭い・・・決め打ちとはそういうものだろう?」

ミッターマイヤー 「なるほど,決め打ちね・・・」

ロイエンタール 「奴が決め打ちを続けるとすれば,次に奴が振込んだときは・・・ハコテンだ」

ミッターマイヤー 「警戒するにしくは無いな^^」

ロイエンタール 「うむ・・・^^」



・・ご冗談を No.066
Vol.0?-p.??? by Torünicht


ミッターマイヤー 「ロイエンタール! 今日は卿のことで陛下の前で冷や汗をかいたぞ」

ロイエンタール 「む?」

ミッターマイヤー 「先刻,いきなり陛下からロイエンタール元帥が現在ギッている字牌の色は何色か?などと御過言があってな」

ロイエンタール 「それで?」

ミッターマイヤー 「俺はうる覚えで,たしか白だったと思うと申し上げると・・・」

ロイエンタール 「その字牌は哭かれた」

ミッターマイヤー 「はは・・^^;そうらしいな・・陛下は明るい赤であろうとおっしゃられてな・・俺の前に卿が打牌したときに袖口からその色の牌が落ちたのをエミールが見つけたのだそうだ・・麻雀でブラフをかけるメンツくらい選んだらどうだ? 玄人趣味で有名なロイエンタール店長ともあろう者が・・・」

ロイエンタール 「俺は別に趣味で玄人をやっているわけではない,生まれた家がたまたま雀荘だっただけだ・・・それに俺の店はなぜか評判が悪いらしくてな,ひらの雀士は打ち手がない」

ミッターマイヤー 「はは・・^^;」

ロイエンタール 「それより陛下はそれを咎めておいでになるのか?」

ミッターマイヤー 「いや,一時の笑い話になさっただけだ.陛下は他家の打ち筋にはまったく干渉されないからな.子の個性を尊重なさるのも親の度量というものだろう」


〜〜〜ロイエンタール回想中〜〜〜


ラインハルト 「私を倒すだけの役と翻数があるのなら,いつでも挑んできてかまわんぞ」


ロイエンタール 「・・・50符3翻」

ラインハルト 「・・・私を倒すだけの役と翻数があるのなら,いつでも挑んできてかまわんぞ」


ロイエンタール 「・・・ご冗談を」



線に・・・? No.067
Vol.08-p.015 by Wahei


 フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトとアーダベルト・フォン・ファーレンハイトの両雀師は皇帝に先だって雀荘ハイネセンを離れ,イゼルローン雀荘方面へそれぞれの雀牌を持って向かいつつある.両者とも積極打牌型の暴牌師で,ことにビッテンフェルトは,「黒色点数棒」箱をひきいて猛打師の名をほしいままにする男であった.

 前半荘につづくトビ寸前にもかかわらず,ビッテンフェルトは一貫して先鋒打牌官をつとめており,実際のマイナス分もさることながら,その放銃自体が持つ破壊力は尋常ではなかった.

 彼の勇打ぶりについて,他の帝国軍雀師たちが語りあったという.

帝国軍雀師A 「ビッテンフェルトは危険牌をきったのか?」

帝国軍雀師B 「・・・すこし違うな,奴がきったのを危険牌というのだ」

 上のエピソードは帝国軍宇宙雀隊司令長官ウォルフ・ガング・ミッターマイヤー雀元帥に言わせると,ビッテンフェルト自身が放銃した雀師の創作ではないかという疑いが濃いのだが,いかにも彼らしい話だ,という点と,自分もあやかりたいという点とでは誰ひとり異論をはさまなかった.



ッテンフェルトの・・・ No.068
Vol.07-p.042 by Wahei


 ラインハルトはこの半荘が始まってすでに4,5回,リーチのみの安手であがっていたが,今回ふたたび即リーをかけたことに,彼の若い美意識はためらいをおぼえたのであった.

 それを吹きとばしたのは,ビッテンフェルトの暴挙であった.皇帝に考えるのならツモってからにせよと言われた彼は,先刻ミッターマイヤーが捨てた牌に対し鳴きをかけたのだが,若い君主は,最初は一発を消されてやや不満気味だったことを除けば,さほどの感銘を受けたようには見えなかった.ビッテンフェルトが無意味な行動を行なうのは当然すぎることだと皇帝は思っていたのだ.

ビッテンフェルト 「陛下がこれまで常勝を誇られたゆえんは『上がりやすきに上がる』ではなかったのですか.今回にかぎり,安くとも即リーされていたことに自責の念をおもちになるのですか!?」

 そういって,オレンジ色のヤキトリマークを常に携える猛将は,自風でもない風牌を槓子にしたのである.

 王牌に新たなる牌が返された.その行動が金髪の若者の手牌に与えた効果は,おどろくべきものだった.

ラインハルト 「ビッテンフェルトの槓やよし」

 ソファーから跳びあがりたい気持ちをおさえるのに必死な皇帝の手牌は,苛烈な槓ドラにみちかがやいていた.牌のなかには,今しがたのビッテンフェルトの槓ドラが乱舞していた.彼は別にビッテンフェルトに感謝はしなかった.自分自身の持っている強運を再認識しただけである.

ラインハルト 「予は安すぎた・・・・・・だが,大義名分の最大にして至高なるものは『上がった者勝』である.その名分の前には,どんな高めテンパイも上がれなければ考慮に値せぬものであったのにな」

 場が結晶化したような静寂の中で,皇帝の声が律動の波を立てた.

ラインハルト 「ビッテンフェルト提督!」

ビッテンフェルト 「はっ,はひ」

ラインハルト 「卿に言っておく.卿の槓ドラをもって予の手牌は強化された.責任払いはないにせよ,直取りで誰かがとんだ場合,いまだヤキトリである卿はサイコロ振りを免れぬだろう.予がツモることを願うのだな」

ビッテンフェルト 「・・・御意」

 オレンジ色のヤキトリマークを握り締めて,若い猛将の顔が蒼白になった.彼の暴挙は最低の形で報われたのである.ついで,ラインハルトは蒼氷色の瞳を,上家の主席秘書官にむけた.

ラインハルト 「フッ・・・ロン,マリーンドルフ,貴女の捨牌にアガリを宣言する.倍満分の点棒を支払っていただく」

ヒルダ 「は,はい,陛下」

 ヒルダはラインハルトの覇気に圧されて,安パイや回し打ちを忘れ,放銃をしてしまったのである.彼女の目にも,皇帝のドラ8が成金的にまぶしいほどきらめいて見えた.

ビッテンフェルト 「それにしても,陛下,小官が槓をしなければ,本当にリーチのみでございましたな」

 ヒルダの点棒がかろうじて残っていることに安堵したビッテンフェルトが言うと,ラインハルトは点棒をもらう手を差し出すのをとめて振り返った.豪奢な黄金の髪がヒルダの顔をうった.そして若い雀王は,後世の麻雀家が彼の伝記をしるすにあたって,かならず書きとめる台詞を,思わずほころびた唇から打ち出したのである.

ラインハルト 「予に役など必要ない.乗ったドラの数がすなわち予の役数だ.当分はリーチのみで上がることになるであろう」

 ほとんど戦慄に近い不快感が,提督たちの中枢神経を駆け抜けた.この凶運・ドラ麻雀こそが,彼らの贊うべきカイザーの本質であった・・・



雀士ヨブ 第1章「白銀の大三元」 No.069
Vol.0?-p.??? by Torünicht


〜〜〜首都星ハイネセン地下〜〜〜


 ドワイト・グリーンヒルを首謀者とする軍事クーデターが蜂起し,身の安全を図るため,私ことヨブ・トリューニヒトは地球教信者と共に危機を乗り切るべく一時的に身を隠していたのであった.

トリューニヒト 「ふむ・・・それにしても,退屈なところだね,ここは」

 基本的に質素であることを美徳とする地球教徒たちであるため,その対応は極めて寡黙で退屈なものであった.確かに非常時ではあるので,普段に比べて生活の水準か下がるのは仕様がないことではあるのだが・・・

トリューニヒト 「それにしても・・・退屈すぎる!」

私は,地球教徒に何か退屈しのぎができる娯楽のようなものはないのかと尋ねてみた.

トリューニヒト 「何? あるというのかね? だったら,それで暇をつぶそうじゃないか」

そして,地球教信者3人が集まり,なにやら準備をしているようだった.私は,いったいどんな娯楽なのか尋ねてみた.

トリューニヒト 「なに? まぁじゃん? ふむ・・・それは4人で対戦するのかね?」

・・・私は,少し興味が湧いてきて,準備をしている最中にいろいろ聞いてみた.なんでも,そのゲームは,地球発祥の古くから伝わる娯楽で,”麻雀”と地球の東洋の古代文字で書かれ,麻雀卓を囲んだ4人の雀士が麻雀牌というもので役を作り,その役作りの速度と役の高さによって,点棒というもので勝敗を決めたのだということだ.

 私は,一通りのルールと役についての説明を受け,理解した(まあ,私のように多忙で,普段から,スピーチのための原稿を本番の5分前に全て暗記する程の能力があれば,ゲームのルールの一つや二つ簡単に覚えられるのである)

トリューニヒト 「さて! では・・・はじめようか,諸君!」

・・・・・・こうして,あのヤン・ウェンリーの手腕によってクーデターが鎮圧され,身の危険がなくなり,地上に再び現れるまでの間,私は地下徹マンで退屈しのぎをしていたわけだ.そして,私の胸には,以前とは違う何かがきらめいていた・・・それは,白銀に輝くネクタイピンで,そこには,”白”,”撥”,”中”の三元牌が掘り込まれており,そこには確かに,大三元が出来上がっていた.

 まあ,当然のことながら,地下麻雀で一人勝ちした私は,点数分だけの報酬を受け取らねばならないのであるが,質素を旨とする地球教徒が所持しているだけの金で足りようはずもなく,何か他に,金目のものはないかと物色したところ,その白銀に輝く大三元を掘り込んだネクタイピンが発見したわけである.

私は,その白銀の大三元を地球教徒から奪い取り,自分の所有物にした.なにせ奴らにはネクタイピンなど必要ないからである.いや,それ以前に,これが似合う人物はこの全宇宙で,私一人だろう(ラインハルトもヤンも,ルビンスキーですらネクタイしていないしな)

こうして,私はこの世にその存在が確認されているレアアイテムの一つ”白銀の大三元”を手に入れることができた.この時,私の最終目的に少し変化が生じはじめていた.それは,私が求めていたものが,全人類の政治的な支配ではなく,麻雀による支配ではないだろうか? ということである・・・私は,今後の自分自身の目標を具現化するものとして,この”白銀の大三元”を胸に未来への道を歩んでいくことを誓った.

・・・つづく・・のか?


次回予告: ”白銀の大三元”をゲットしたトリューニヒト・・・しかし,そこには舞台裏で蠢く地球教の影が・・・はたして地球教の真の目的とは? もし,トリューニヒトが地球教の手のひらで踊るピエロであるとすれば,それが意味するものは何であるのだろうか? そんな中,トリューニヒトはつぶやく・・・”私の数値は『1』だ”・・・と,それは彼にとっての決意のあらわれなのか? それとも・・・

次回,麻雀士ヨブ 第2章「yAkItoRi」



雀士ヨブ 第2章「yAkItoRi」 No.070
Vol.0?-p.??? by Torünicht


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〜〜〜首都星ハイネセン地下〜〜〜


 ある日のことだ.わが屋敷に突然の来訪者があった.

トリューニヒト 「ほう,エルファシルの雀雄に訪ねて来てもらえるとは光栄だね」

 エルファシルの雀雄ことヤン・ウェンリー店長が,私の屋敷に訪ねてきたのは.雀没者慰霊祭(雀没者:麻雀で焼き鳥を被り,灰と化した人々のこと)で雀没者を弔う麻雀大会をおこない.その後,麻雀協会役員連中との半荘を終えて帰宅し,リビングで三次元麻雀をしてくつろいでいる時であった・・・私の言葉についで,ヤン店長が言葉を発した.彼が言うには,雀友の焼き鳥が関わっているということだった・・・

トリューニヒト 「雀友の焼き鳥ねぇ・・・それは大変だ・・・ふっ」

 そして,ヤン店長は付け加えて言った.それは,今日の麻雀大会であなたがカモにしたジェシカ・エドワーズ雀士のことです・・・と,私は,ふと雀没者慰霊式典でおこなわれた,雀没者慰霊麻雀大会での出来事を思い出した.

トリューニヒト 「ああ,あの女流雀士のお嬢さんか・・・」

そう,私は今日の慰霊祭での麻雀大会で,一人の女流雀士をカモにした.普段の私なら,そのような式典でのお遊び麻雀では,本気を出さないのであるが.今回は別であった・・・その女流雀士の口三味線が,私を非常に不愉快にさせたためである・・・彼女は,こともあろうに,この私に対して,貴方はなぜドラを鳴きますか? 他人にヤミ打ちを勧め,ドラ麻雀を打つことを非難する貴方は,なぜドラを鳴きますか?と・・・まったく,何を言っているのだ.この女は? 私は,こともあろうに勝負の最中,一瞬・・・不快感を覚えてしまった.そして,その瞬間! 私の耳にさらに不快な単語が飛び込んできた.”ロン!” ・・・私は,呆然として呟いた.

トリューニヒト 「は? 南ですと?」

その瞬間,女の牌が倒された.それは,先程まで国士無双テンパイ,南待ちであった手を私の目に焼きつかせた・・・

 私は,一通りのルールと役についての説明を受け,理解した(まあ,私のように多忙で,普段から,スピーチのための原稿を本番の5分前に全て暗記する程の能力があれば,ゲームのルールの一つや二つ簡単に覚えられるのである
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トリューニヒ 「・・・っ!!!
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私は,これまでにあまり味わったことの無い不快感に襲われた.そして,私は,その半荘が終了した時点で,2着であった.トップは言いたくも無い人物であった
D
私は,その時,既に私の取り巻きである憂国雀士団によるジェシカ・エドワーズへの報復を決意していた.次の半荘で,彼ら憂刻雀士団は,あらゆるサマ(イカサマ)をコクシして,ジェシカ・エドワーズを完膚なきまでにカモにし,一度もアガらせることなく半荘を終わらせた.ふふ,さすが,私の影の部隊だけのことはある
D
・・・そして,自信喪失している彼女に向かって,私は追い討ちをかけるように言い放った
D
トリューニヒ 「係員! このお嬢さんは,鳥にまみれているようだ, 早くサイコロを振らせなさい
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とまあ,このようなことがあったため,今,彼女の親友のヤン店長が私に謝罪を求めてきているのだった
D

しかし,私はまったく謝罪する気もなければ,悪い事をしたという気持ちも持ち合わせてはいない.先に仕掛けてきたのは,あの女ではないか
H
だが,これはいい機会ではある.あのヤミ打ちで有名なエルファシルの雀雄のヤン・ウェンリー店長が,わざわざ,わが屋敷を訪ねて来てくれているのだ.これはまたとない機会ではないか? 三次元麻雀にも飽きてきたところだしな・・・ふふふ,私は,これから得られるであろう刺激を思い浮かべて,ひとりごちた
D
トリューニヒ 「ヤン店長・・・君には期待しているよ
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・・・つづ


次回予告  ヤン店長の突然の来訪を受けたトリューニヒト・・・そして,二人は麻雀を打ち始めた.まるで,その空間だけ,刻の流れが停止したかのような感覚さえ感じられた.二人の点棒は,それぞれのハコを往来する.まるで,点棒が意思を持って,自分の所有者を捜し求めているかのように・・・そんな中,トリューニヒトのハコから一本の千点棒が,意を決したように,横向きに捨てられた牌と共に卓上に出撃した! 果たしてこの一局が全体の戦況に何らかの影響を与えるのであろうか
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次回,麻雀士ヨブ 第3章「ヨミがフカクなるのは・・・
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